インターネットの最近のブログ記事

週刊ポストが「NHKの「人肉食った日本兵」表現に捏造疑惑」という記事を掲載した。
http://www.news-postseven.com/archives/20110905_30277.html

ニューギニアで飢えをしのぐため、日本兵が友軍同士で共食いした事実があったことは有名だが、これを扱った証言番組で、ネズミを食べた話を人肉を食べた証言になるように編集して捏造放送したのではないかというのが、週刊ポストの記事。

で、NHK嫌いな人たちが、ろくに自分で調べもせずにこの記事に釣られて、NHKが捏造したとする動画とか作ってネットにアップしてる。まあ、全然盛り上がってないけど。

週刊ポストが問題視した番組の動画は、NHKの戦争証言アーカイブスにアップされてるので、誰でも自由に見られるので確認してみた。
問題部分は、以下の動画の23:50からだ。
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/bangumi/movie.cgi?das_id=D0001210027_00000

この内容は、確かに週刊ポストの記事通りの内容で、友軍の死体を食べる話の後に、一度編集が入ってから、「すごい、抵抗感とかもあったんじゃないですか?」という女性の問いかけがあって、生きるためにはしょうがないという話が続いている。

戦争証言アーカイブスでは、番組に関連した証言について、番組で使用されなかった部分も含めて、個人単位でインタビュー動画を公開しているが、週刊ポストの記者はこの証言動画を見て、番組でカットされた部分はネズミを食べた話だと思ったわけだ。

証言インタビューなんてものは、それこそ一人毎に何時間もあるだろうから、それを全て無編集で公開なんぞされては、見る方はたまらない。確かに、番組で取り上げなかった証言も聞きたいけれど、それでも無駄に長いのでは見る気が失せてしまう。なんせ、既に公開されてる証言動画だけで、もう500件を軽く超えている。証言を可能な限り公開することの意義は大きいだろうが、膨大な数の中に貴重な証言が埋もれてしまっては意味がない。だから、証言を歪曲しない範囲で、証言動画も編集されるべきであることは疑いないだろう。

しかし、週刊ポストは、証言動画も編集されていることを認識しながら、そこは軽く流し、こう書いたわけだ。

>アーカイブスを見る限り、一連の証言が「腹が減った兵士たちはネズミを生で食べて飢えをしのいだ」という内容であることは疑いの余地がない。

そして、証言動画に対する上記解釈を前提に、これと異なる編集がされた番組は捏造ではないかと論じた。もちろん、何の証拠もないもんだから、「NHKのドキュメンタリー番組に携わっていた元番組制作スタッフ」の発言という形で。

他人の発言を伝聞形式で紹介するなら、どんな証拠のない話でも許されると思ってるのだろうか?

更に、それでも心もとないのか、仮に番組が捏造じゃないなら、ネズミを食べた話に見える証言動画が捏造になると論じて、言い逃れも忘れていない(苦笑)

そんなに自信がないなら、記事にしなきゃいいのにと思うけどね。
それじゃ、ネットの掲示板とレベルが変わらんではないか。
それを信じて、更にネットに転載するマヌケが出るのだから、どうにもこうにも...


で、流石にNHKが反撃した。
現在、戦争証言アーカイブスのトップページに、「おことわり」という欄を設けて、週刊ポストへの抗議文を公開している。
http://www.nhk.or.jp/shogenarchives/

同時に、当該証言部分のノーカット版を、静かに公開した。
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/shogen/movie.cgi?das_id=D0001100674_00000&seg_number=004

静かにというのは、ノーカット版を公開したこと自体について、NHKは特に告知していないからだ。週刊ポスト同様、証言者に配慮しつつ、自らの正当性を証明する最低限の手段を講じたのだろう。戦争証言プロジェクトのメールマガジン購読者に対しても、週刊ポストへの抗議文の公開の件だけ伝えられた。(自分はこのメールマガジンで知った。)

そして、当該動画の再生テキストの中に、「誤解が生じる可能性があると判断したため、ノーカットで公開します。」とだけ書かれている。お陰で、該当部分が分かった。

見たら分かるが、NHKの週刊ポストへの回答書に、嘘は全くなかった。
番組でカットされていた、証言と「すごい、抵抗感とかもあったんじゃないですか?」という女性の問いかけとの間も、人肉の食べ方の話だった。ネズミの話は、番組で使った証言より前の部分と、女性の問いかけに答えた証言の更に後の部分に出てくる。番組は、完全に証言に従った編集であったわけだ。

週刊ポストからすれば、当初編集されて公開されていたアーカイブスの証言動画が、「最も衝撃的で貴重な人肉食の話を割愛し、ネズミ食の話だけ残すような編集をしたというのも不自然な話だ。」と思って番組を捏造と思ったわけだが、衝撃的であるからこそ、公開に配慮があった可能性に、思いは至らなかったのだろうか。

週刊ポストのように、衝撃的なら記事にして良いとは、NHKは思ってないだけでしょ。

まあ、そもそも、証言動画のページから、クリック一つで番組の動画が見られるわけで、当初の証言動画でカットされていた部分がその番組でしっかり使われているのだから、両方ちゃんと見れば全てが伝わる。

おまけに、元々公開されてた証言動画だけでも、日本兵が友軍を撃ち殺して食べていた事が語られているわけで、殺してないけど死体は食べたという証言者の話より、十分に衝撃的な話が公開されていたわけだ。(まあ、そういう事実があったこと自体は有名なので、新事実でもなんでもないのだけど。)

もちろん、ネズミを食べた話も事実であって、捏造ではない。この方は、人肉を食べたこととネズミを食べたことをシームレスに語っており、両者に対し、最初は抵抗があったという話が掛かっているのだ。(ネズミと人肉が同等に語られていることは、ある意味衝撃かもしれない。)

このレベルを捏造と言い出したら、週刊ポストのこの記事はどういうレベルになるのかね?


まあ、ここまで書いて今更だけど、週刊ポストがどうだとか、NHKがどうだというのは、実はどうでも良いとも思っている。

重用なのは、この戦争証言アーカイブスの存在が、もっと知られるべきなんじゃないかということだ。この番組で取り上げられた連隊の方々の証言は、どれも貴重だ。辛い証言を、実名で番組にしたり公開することを承知してくれた方々の思いを、無駄にしてはいけない。日本人なら、見るべきだとも思う。

以前からそう思っていたのだけど、今回の記事をきっかけに、その思いを強くしたので、今回ブログで取り上げてみた。

もちろん、実名で証言して下さった方々に対し、これを責めるようなことがあってはならないし、週刊ポストの記事にもあったように、そっとしておいてあげるべきだ。週刊ポストは、とっとと謝罪しちゃいなよ。この問題が訴訟にでも発展したら、それこそ証言者に申し訳ない。

そうすれば、こんな記事がきっかけでも、戦争証言アーカイブスの存在が広く知られることになれば、意味があったと思う。

衝撃的な証言も沢山あるのだけど、それだけではない。面白いと言うと語弊があるけれど、興味深い話も埋もれている。暇な時間があれば、色々検索して見ることをオススメしたい。

一昨日、信用できると書いた、日本ユニバ震災対策チームが、情報発信を続けている。
http://maruko.to/2011/03/post-108.html

Facebookが、活動報告の場になっている。
http://www.facebook.com/nucct

その情報公開担当&ボランティア採用担当がこの方。
http://twitter.com/kemori63

Facebookでは、以下のボランティア説明会情報が掲載されていたが、もう時間が近いので、勝手に転載しておく。
-->
明日ボランティアの方向けの説明会を開催します。
日時:明日3月19日(土)13時~14時
そのまま作業をお手伝い頂く方もいらっしゃるかも知れません。
場所:東京都千代田区神田錦町3-21ちよだプラットフォーム 2F
地図:http://bit.ly/eeh1Yg

主な作業
1. 被災地向けのドライバー
2. 荷物を受け取り、仕分ける係
3. 電話対応 (秘書および電話業務経験者が望ましい)
4. メールの回答
5. 翻訳(Webサイトの翻訳、英語・中国語およびその他の言語)
6. 写真の撮影 あるいはWebサイトの制作
<--


その他、支援物資を送りたい人は、以下もよくチェックを。
http://www.ud-web.com/oshirase3.htm
http://www.npo-uniken.org/shinsai_busshi.html
衣類等は、一時受付けを中止しているようだ。

昨日の様子が、動画で公開されていた。


なお自分は、面識もない日本ユニバ震災対策チームについての情報の錯綜を整理して、少しでも助けになればと勝手連的にここに書いているだけなので、ご注意を。一応都民なのだけど、諸事情でずっと箱根の山中におり、この一週間歯痒い思いをしている。

東京と連絡を取れば取るほど、食糧の無駄な買いだめや、誰々が関西・九州方面へ避難したという話に、少々ウンザリする。食糧などを大量に買い占め、もしも反省している人は、今からでも遅くないので、日本ユニバのようなNPOに届けることをオススメする。

レストランとか営業してるでしょう?
知り合いも、東京の杉並で、店内の照明など節電しつつ、蕎麦と地酒の店の営業を続けている。みんな、買いだめせずに、外食しなよ。


なお、東京都などの自治体も、救援物資の受付を開始したが、少なくとも東京都は、現地が必要としている食糧等は受付けていない。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3hd00.htm

自治体とNPOのできることの違いを理解して、それぞれを生かせる支援を、できる範囲で、心がけよう。


ユニバ震災対策本部というのが、阪神淡路の経験が、被災地の支援を阻害しているという重要な指摘をしており、Twitter等でちょっと話題になっている。

http://anond.hatelabo.jp/20110317015611
(ソース http://npo-uniken.posterous.com/46132557

しかしこれが、実は詐欺ではないかとか、いまいち信用できないとか、結構疑われている。

http://www.ud-web.com/oshirase3.htm
このサイトも、一見信用に足る情報を見つけるのが困難なせいだろう。

ユニバ震災対策チーム支援HPを別に立ち上げたようだが、
http://trythis.jp/
急ごしらえ過ぎて、そもそも地震の日すら間違っており、本当は11日なのに、10日と表記している。ドメインも、ユニバーサルコーディネーターな個人が以前から取得しているもので、使いまわしなのだ。
-->
>追記
どうやら既に、上記リンク先は正式HPへの転送のみとなっているようです。
本日午後11時には削除すると表記されてます。
<--

要は、何故かいまいち信用できない認定資格についてのサイトに、ユニバ震災対策本部の呼びかけを掲載しているせいで、運営団体との一体性が疑われてしまっているのに加え、支援HPも怪しいとしか見えないのだ。

しかし、自分は信用したので、その根拠を提示しておく。

まず、当該NPOは内閣府のデータベースにちゃんと存在する。
「日本ユニバーサルデザイン研究機構」で検索してみよう。
https://www.npo-homepage.go.jp/portalsite.html
住所も整合性がある。
http://www.yamori.jp/list.php?i_id=%A4%CA
同NPOのサイト自体は、まあ信用できる。
http://www.npo-uniken.org/
また、同団体の運営する認定資格の取得講座も実在する。
http://www.anabuki.gr.jp/~hiroshima/ud/

同団体と直接連絡を取り、賛同して救援物資送り先を掲載しているブログも結構ある。

静岡県議会議員
http://nakada-tugisiro.blogspot.com/2011/03/blog-post_14.html
http://nakada-tugisiro.blogspot.com/2011/03/blog-post_8188.html

その、物資の東京での送付先も、ちゃんと実体がある福祉施設だ。
http://www.camellia-kai.com/

http://mobile.niwablo.jp/hanamakedo/kiji/87334.html?display_image=true
この人が連絡を取ったユニバ地震対策本部本部長も、名前で検索すれば活動実績はある。

http://www.pref.yamanashi.jp/news/200808/1219804858155.html
http://www.dh.aist.go.jp/jp/general/hcdws2011.php

旦那が同機構で勉強しているという人も。
http://ameblo.jp/yumegococi/entry-10829505001.html
http://ameblo.jp/yumegococi/entry-10831139846.html
書いてあることは、物的支援のみで、金を降り込めというような詐欺的な要因は全くない。

上記の方の友人という方のブログも、疑わしい点はない。
http://blog.goo.ne.jp/arigato-adachi/e/cfc6797c0dcf7c2d35bcab69e439723f

地方の賛同者には、地方の代表が受付をしている。
http://blogs.yahoo.co.jp/mamateresita2495/60425356.html
賛同者も地方代表も、詐欺的な要素は見当たらない。


結局、別サイトに飛ばしてしまったり、何の信用性もないJPドメインを支援サイトにすることが、どれだけ信用性を失うのか、ユニバ震災対策本部の人々が理解していないのだろう。もしくは、時間的余裕のない中、限られた人員でなんとか支援を広く呼びかけようと頑張って、これが限界だったのかもしれない。

少なくとも、金銭的な詐欺を目的とした活動としては、説明がつかないことは、上記を見れば誰でも理解できるだろう。

ユニバ震災対策本部は、疑われないために、ちゃんと活動の証拠になるような写真や情報提供を、もっと心がけるべきだ。重用なことを言っているのに、信用されないのでは勿体無い。

>追記
これが、公式な情報だそうだ。
http://www.npo-uniken.org/shinsai_busshi.html
物資を送ろうと考えている人は、上記をよく読もう。

>追記
こんなのもありました。
http://pressa.jugem.jp/?eid=213
とりあえず、今は公式ページにリストアップされている物資の支援に限定した支援を注意すべきだろう。
実際に届けに行った方も。
http://twitpic.com/4a8y4o

>追記3/18
facebookにアカウントが。
http://www.facebook.com/nucct
これまた届けに行った人の報告。
http://twitter.com/jucchan/status/48600706663452672


アルジャジーラは、以前からCCライセンスで番組を提供している。
http://creativecommons.jp/features/2009/10/701/

CC BY3.0なので、アルジャジーラの名前をクレジットすれば、複製・頒布、二次的著作物を作ってもOK。

大した不利益もないのに著作権を主張すれば、報道機関として、世界の人々の知る権利に資することができないと、自らの存在意義を理解しているのだろう。見てもらってナンボだ。

ライブでストリーミングもしており、最近のエジプト情勢など、見始めると目が離せなくなるから困る。
http://english.aljazeera.net/watch_now/

恐らく今、世界中のエジプト人は、アルジャジーラのライブストリーミングに釘付けだろう。

日本の放送事業者のように、在外邦人がネット経由で番組を見ることを裁判で訴えるような、無益な権利濫用は、彼らからしたら馬鹿に見えるかもしれない。(娯楽番組も含まれるから、日本の場合をアルジャジーラと一緒にするなと言いたい人もいるだろうが、上記ライブを見ていれば分かるが、アルジャジーラも報道番組ばかりではない。)

「番組のネット配信にルールを 」(日本経済新聞 電子版 2011/1/31付)
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE0E0E7E4E5EAEBE2E1E3E2E3E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
<--
日本は地域ごとに放送局があり、広告の入った番組がどこでも見られるようになれば営業にも支障を来す。
-->

いやいや、それ、もっともらしい説明だけど、訴えた放送事業者には、NHKが含まれてますから(笑)

NHKに受信料払う側の意思としては、NHKがこの訴えを提起したこと自体、受け入れ難い。


ところが、
http://wiredvision.jp/news/201101/2011013121.html
-->
収益の多くを海外メディアからの「映像使用料」が占め、特にNHKが払う金額が一番大きく、同局の大きな助けとなっているとされる(NHK-BSが世界のニュースのひとつとして枠を設けて日本語同時翻訳放送を行なっている)。
<--

回りまわって、NHKがアルジャジーラの最大の援助者というのが、なんとも皮肉だ。
BS1が連日伝える、アルジャジーラの翻訳報道は、確かに価値がある。このこと自体は、NHKナイス!

しかし、公共放送たるNHKの中の人は、CCライセンスやライブストリーミングと、ビジネスをどう線引きすべきなのか、アルジャジーラから学ぶべき点が大きいのではないか?

http://english.aljazeera.net/



「1対1通信のロケフリは「自動公衆送信装置」になりうるか 「まねきTV」最高裁判決の内容」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1101/19/news076.html

「録画番組の海外転送、レコーダーが業者管理下なら著作権侵害に 最高裁、審理差し戻し」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1101/20/news088.html

最高裁が、残念な差戻し判決を立て続けに出してしまった。
著作権法の世界では有名な、まねきTVとロクラク事件だ。

このブログでも、かつて取り上げた。
http://maruko.to/2009/02/post-6.html最後のところに
>最高裁...ひっくり返さないでね(^^;;
と書いてるが、虚しい。
まさか、訂正せねばならない事態が訪れるとは(涙)

しかし、まねきTVなんて、まだ続いてたのかというのがそもそも驚き。
仮処分で完敗したのに、本案で逆転て、それ自体興味深い。
5年かかって、しかもまだこれから差戻しの原審が待っている。
スピードを求められるインターネットビジネスの世界で、我が国の著作権法がどれほど機能不全を起こしているのか、よくよく再確認できたというところか。

前置きはこれくらいにして、では2つ続けて、長いつっこみを入れようと思う。
ただし、基本的に批判的に。


■■最判平成23年1月18日 まねきTV■■
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=6708

送信可能化権侵害の判決理由
-->
5 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 送信可能化権侵害について
ア 送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。
自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

イ そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

ウ これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。
<--

送信の主体
今回の判決で最大のポイントは、以下の2点だ。
 ・5(1)ア:「公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)」
 ・5(1)イ:「当該装置に情報を入力する者が送信の主体
以下、それぞれについて論ずる。

■「公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信」か
実は、公衆送信を定義する2条1項7号の2には、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。」としか規定されておらず、「送信の主体からみて」という視点の追加は存在しない。一見当たり前なので、思わずスルーしてしまいそうだ。

ところが、その視点からしたら、「あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるとき」があると、最高裁が考えてしまった。

自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)」と言っておきながら、単体で自動公衆送信する機能を有しなくても、自動公衆送信装置に当たる「べき」となったというのだ。

斬新な「べき論」の登場だ。
(「あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない」装置で自動公衆送信を成立させるために、「送信の主体」という視点を追加したのだから、斬新なのは当たり前なんだが(苦笑))

そして、斬新な「べき論」を成立させるため、「送信の主体」を画期的に導くのが、続く5(1)イだ。

■「当該装置に情報を入力する者が送信の主体」か
送信の主体」が、送信した者ではなく、入力した者だというユニークな解釈は、とても「相当」とは是認したくないので、5(1)イを修正してみるとこうだ。

自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みたところで、その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当ではなく、当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者はせいぜい送信可能化の主体であって、送信の主体であると解することは、相当ではない。

さて、どういうことか。

5(1)イで示された自動公衆送信の行為主体についての規範は、まるで送信可能化の行為主体の要件なのだ。自動公衆送信は、送信可能化の上位概念か何かなのだろうか?

送信可能化は、「著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする」ことなのだから、その行為主体が自動公衆送信の行為主体と異なる場面を、法が当然に予定していると言って良い。そして、入力した者が送信可能化の主体に含まれることは、2条1項9号の5イが「当該自動公衆送信装置に情報を入力すること」と規定していることからも、明らかである。

しかし、公衆送信権に関する23条1項が、「著作者は、その著作物について、公衆送信自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。」と規定していることが、多少の混乱を生むかもしれない。自動公衆送信送信可能化が含まれるのごとき、本判決のように。

まあ、少し考えれば、公衆送信送信可能化が含まれないことからすれば、その下位概念である自動公衆送信送信可能化が含まれることもないとは気付く。これは単に、自動公衆送信の場面では、送信可能化権も認められる、というだけだと。

更に言えば、本件上告人らは、放送事業者としての送信可能化権(99条の2)の侵害を争っている。放送事業者は、自らが著作権を有しない番組は、公衆送信権も自動公衆送信権も有しないが、著作隣接権としての送信可能化権が認められている。

公衆送信権を認められていない放送事業者の送信可能化権を論ずるなら、その送信可能化の行為主体に該当する行為が、同時に自動公衆送信の行為主体に該当してはマズイ。
 →「X君にの権利はありますが、の権利はありません。でも、すると、もしちゃいます。」というのは困る。

行為主体がたまたま同一になることはあるだろうが、著作権法は刑事罰があることから、誤解を恐れずに刑法的な例えをするなら、送信可能化自動公衆送信は牽連犯たり得ても、観念的競合ではない。

23条1項括弧書の場合とは、準備行為である送信可能化権が認められずに自動公衆送信権が認められても絵に描いた餅だから、自動公衆送信権を有する者は、当然にその準備行為の権利も認めますよ、ということだろう。それぞれの行為を別々の主体に行わせることは、十分に可能だ。

例えば、著作物の権利者が、どこぞのハウジング業者にホームページ用のサーバ(自動公衆送信装置)を預けて自ら運用しているが、自らの著作物を公開するためのホームページの制作・ファイルのアップロードは外部業者に委託している場合、送信可能化したのはホームページ制作業者で、自動公衆送信しているのは著作権者自身ということになろう。入力(アップロード)する者が送信の主体になるなら、ホームページ制作業者に、自動公衆送信権まで与えなければ、仕事を委託できないことになってしまう。

これが、権利侵害を前提とするプロバイダ責任制限法の話なら、入力した者が発信者とされるのだけど、文化の発展に寄与することを目的とする著作権法は、権利の活用を想定して解釈する必要がある。

よって、「入力する者が送信の主体」という、自動公衆送信送信可能化の行為主体が一致する5(1)イのような規範を立てるのは、画期的過ぎて理解を超える。

送信可能化権侵害のあてはめ部分
こんなにつっこみどころ満載な規範は、とても論理的に導かれたとは考えられない。どうにかして、自動公衆送信する機能を有しないベースステーションを、自動公衆送信装置に仕立てようと、結論ありきで頑張ったのだろう。5(1)アの「べき論」で飛躍させた理論に合わせて、5(1)イもぶっ飛ばしたのだ。恐らく意識的に。そして、5(1)ウであてはめ完了だ。

ザックリ書くと
・5(1)イへのあてはめ
 ベースステーションに入力している被上告人は送信の主体
・5(1)アへのあてはめ
 送信の主体である被上告人からみて自動公衆送信なのでベースステーションは自動公衆送信装置
∴インターネットに接続しているベースステーションに放送を入力する行為は送信可能化権侵害


うーむ。
入力しても送信の主体じゃなければ、送信の主体でない被上告人から見ても自動公衆送信は見当たらず...というはずなんだけど(^^;;

公衆送信権侵害の判決理由
-->
(2) 公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。

<--

あれ?放送事業者に公衆送信権は認められていないんじゃなかったの?
と思うかもしれない。

しかしこれは、上告人らが制作した番組について、著作者として著作権を有する立場から主張した公衆送信権侵害だ。よって、5(1)と混同してはならない。別物だ。

ポイントはやはり、「送信の主体
・テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人
・ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体も被上告人
∴テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信権侵害

アンテナからベースステーションまでの送信て、少なくとも、公衆送信から除外されてる同一構内だと思うが、それは別にしても、やはりここでも「(1)ウのとおり」だから、入力したからと送信の主体にされて、公衆送信権侵害...残念!

■IPマルチキャスト:蛇足
IPマルチキャストは自動公衆送信に該当するので、放送と同時に送信可能化(同時再送信)する場合、放送の複製権(98条)を侵害せず、かつて放送事業者に、これを制限する権利はなかった。そこで与えられたのが、平成14年改正による放送事業者の送信可能化権(99条の2)だ。

つまり、放送事業者の送信可能化権とは、IPマルチキャストによる同時再送信を制限する権利を認めたものだった。「単一の機器宛てに送信する機能しか有しない」装置なんぞ、当時の議論で念頭にあったと思えない。むしろ、IPマルチキャストと言われないために工夫したのが、まねきTVだったのだろう。

ところが今回最高裁は、「べき論」を導くために、放送事業者の送信可能化権の平成14年改正に触れることなく、著作者の送信可能化権の平成9年改正の状況だけ説明した。

実は上告人らは、一審(東京地裁判決平成20年6月20日)から「IPマルチキャストは,チャンネルを選択することにより利用者が求める番組を視聴することができるサービスであって,利用者が選局したデータをIP局内装置に送信したことに応じて,受信者の選択したチャンネルの番組のみ最寄りのIP局内装置から送信するものであり,本件サービスと同様のサービスである(IP局内装置がベースステーションに相当する。)。特に,利用者が自動的にテレビ番組を送信する機器に対して遠隔操作によりデータ送信をさせるための指令(チャンネル選択)を行っている点で全く同一である。かかるIPマルチキャストについては,利用者のチャンネル選択は「公衆からの求め」にすぎないと当然に判断されている。よって,本件サービスにおける利用者によるチャンネル選択も「公衆からの求め」にすぎないことが明らかである。」と主張していた。

つまり、まねきTVが、IPマルチキャスト放送してるという主張だ。個人が所有するベースステーションをハウジング業者に預けたら、ハウジング業者がIPマルチキャスト放送していることになってしまうのだ。ワォ!アメージング!(苦笑)

と思っていたら、最高裁はIPマルチキャストかどうか一顧だにせず、更に斜め上を行ってしまった。

なんせ、アンテナつなげば「入力送信な~のだ。」(バカボンのパパ風に)

★なお、平成18年改正で、同時再送信のIPマルチキャストを有線放送に準じる扱いにする改正がされたが、「専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的」とする場合に限定された話なので、今回は関係ない。

では続けて、ロクラク最判へ


■■最判平成23年1月20日:ロクラク■■
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=6713

複製権侵害の判決理由
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4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

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■カラオケ法理と言われるのを意識的に避けた?
「その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体」になってしまうというのは、基本的に行為主体の転換という結果ではカラオケ法理と同じだが、そもそも転換どころではなく、当然にサービス提供者が行為主体と考えているのだろう。

何しろ、図利性を考慮していない。管理・支配だけでカラオケ法理と言うかは議論の余地があると思うが、金築裁判官の補足意見を読む限り、まんまカラオケ法理と言われないように意識したのかもしれない。というか、カラオケ法理的な規範そのものを肯定した上で、要件の固定化を避けた結果、実質はカラオケ法理の強化とも言える。

何しろ、「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮」するというのは、行為規範にならないから困る。まあ、諸般の事情を総合考慮するみたいな言い回しは判決理由では一般的だが、著作権法のように日常的に誰もが権利侵害し得るのにとんでもなく重い刑事罰が規定されてる法律では、もう少しなんとか予測可能な基準を示していただきたい。

それとも、「複製の実現における枢要な行為をして」、それがなければ「当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能」であれば、「サービス提供者を複製の主体というに十分」という前例が、今後一人歩きするのだろうか?

■それでもやはり「入力」がポイント?
「放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力する」ことは、「複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為」というのが、少々引っかかる。

今回は、入力環境を提供した者が複製の主体とされたわけだが、先の「まねきTV」判決によれば、入力することは送信することで、送信可能化権侵害と公衆送信権侵害だったわけだ。あの規範は、ロクラクのような複製してから子機に送信する場合でも、入力することが複製になるなら、そっくり当てはまる。今回は、たまたま、上告人側が複製権侵害しか主張していなかっただけだ。

すると、本件のように入力環境を提供すると、複製の主体になると同時に送信の主体になって、複製権侵害+送信可能化権侵害+公衆送信権侵害のスリーコンボだ。KO。

アンテナつなげば「入力複製送信な~のだ。」(バカボ(ry)

諸要素を考慮すると言いながら、「放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力する」という、まるで、まねきTV判決に引っ張られたような形式的な行為を理由にしてしまったのが、不可解に感じる。

入力が問題なら、今後はブースターにつないだワンセグ中継アンテナを室内に設置するとかして、各複製機器は自身のアンテナで独自に受信するサービスにしたら、入力が観念できなそうですが、いかがでしょう(笑)

え?受信感度の良い場所で、窓辺に並べて、ダイレクトに受信させた方が完璧?
ハウジングとしてどうかとは思うが(苦笑)

そしたらきっと、入力複製に不可欠な行為ではなくなって、電源供給が複製に不可欠だ!とか言い出しそうだ。すると、電源供給が複製になって、複製したなら送信可能化で、公衆送信権侵害までやっぱりスリーコンボ...

■日本デジタル家電はそれでも元気
ということで、原審に差し戻して、ロクラクの管理状況等をきっちり認定しろ、という結論なのですが、被上告人の日本デジタル家電は、強気のコメントを発表。
http://www.tv.rokuraku.com/index_110120.html

管理状況等の認定次第で、再度ひっくり返る可能性がゼロではない。
つまり、管理状況等を認定したら、複製の主体と言えなくなるロジックが新たに見つかるかどうか...首の皮一枚といったところか。


■金築裁判官の補足意見
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1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断
するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。
このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。

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カラオケ法理の考慮要素は、その二要素だけじゃないと思いますが、カラオケ法理の一人歩きを反省すべきというのは、素晴らしいと思います。

しかし、法律の規定によらずに行為類型によって考慮要素が変わるというなら、行為規範としては最悪ですね。判例の死屍累々が蓄積されるまで、予測不能です。

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2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。
法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。
また,ロクラクⅡの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。

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ここに、考え方の一端を垣間見る部分がある。

「親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない」

確かに、管理の意義というのは重要だが、その社会的、経済的意義というのは、ロクラク独特なものではない。恐らく金築裁判官は、ハウジングというサービスが、インターネットでは極一般的に定着した、当たり前の存在であることを、ご存知ないのだろう。だから、ロクラクのような管理形態が、放送事業者の利益を害する独特なサービスに見えたのではないか。

「本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。」

一度、どこかのiDCにお連れしたいくらいだ。インターネットに接続するサーバというのは、誰もが自宅で管理しているのではない。室温管理、安定的な電源供給、回線の帯域保証など、機材の設置場所を提供する専門の業種が、長年確立している。セキュリティが厳重で、正に管理・支配が強固であることが求められるこれらの業務形態を、様々な利用者が信頼し、自らの所有する機材を預けている。

高速な回線を引くことも、サーバの安定的な運用環境を構築することも、とてもコストを要する上にノウハウが必要なので、その部分だけ専門の業者に任せることで、安価に、簡易に、インターネットを利用できるようにするものであって、その社会的、経済的意義は、広く認知されている。

その前提知識があれば、ロクラクの管理形態が、それほど特別なものでないと分かるだろう。
更に、ホスティングがもっと一般的だと知ったら、どう思うだろうか。

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さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。
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物理的、自然的に観察するだけでは足りないと言いながら、やはり今回は、物理的、自然的な「放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているか」という観点だけで判断したのですね。しかも、結論を左右しないというなら、社会的、経済的観点は、考えるだけ無駄ということではないでしょうか。

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3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。
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「原判断は,こうした総合的視点を欠く」って、原判決ほど、社会的、経済的側面を総合的に観察した判決は、過去にないくらい画期的だったと思うのですが。

原判決の時にもブログに引用したけれど、原判決は、こう説示していた。
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=4093
「かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。
しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。」

これが、社会的、経済的側面を含めた総合的観察でないというなら、一体どんな考察をしろと言うのか疑問だ。


まねきTV、ロクラクそれぞれの法廷の裁判官の平均年齢は約65歳だが、皆さんがインターネットを使っているのか、とても気になる。(ちなみにうちの母は74歳だが、用事があるといつもSkypeで呼び出してくるので、ご高齢だからと馬鹿にしているわけではありません。)


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